EQ理論の4つのブランチ

EQとは?
EQとは誰もが持っている力
EQは伸ばせる能力
EQ理論提唱者からのメッセージ
EQ理論 〜能力の4ブランチ <<
EQの人材能力開発領域
知性1 心内知性
知性2 状況判断知性
知性3 対人関係知性


EQ理論提唱者のピーター・サロベイ教授とジョン・メイヤー教授は、EQという能力を4つのブランチ(パート)に定義しました。

EQ理論

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感情の認識、感情の利用、感情の理解、感情の調整という4つのブランチを開発することにより、個人が感情をうまく使いこなすことが可能になります。

● 感情の識別
相手の感情を理解し、それに対し自分に生まれた感情を正確に理解する能力です。(→詳細解説)

● 感情の利用
理解した感情に対し、自らの思考や行動を助けるための感情を生み出す能力です。(→詳細解説)

● 感情の理解
感情が生み出された原因や特性を理解し、次に生まれる感情を予測する能力です。(→詳細解説)

● 感情の調整
自らと相手が求むべき結果が得られるよう、感情を思慮深く調整し行動へと繋げる能力です。(→詳細解説)

 

EQとは、本来自分が持っている知識やスキルを最大限に発揮するために必要な能力なのです。

本人のテクニカルスキルがいくら身についていたとしても、それらを発揮できなければ宝の持ち腐れです。

それらを発揮させるための土壌(基本スキル=EQ)として感情開発が必要であり、個人の能力を組織のチカラに変える第一歩なのです。

EQ能力ブランチ1 感情の識別

[感情の識別]――自分自身の感情や、周囲の人たちがどのように感じているかを識別し、認識する能力。

自分の感情を知る

「いま、自分はどんな感情なのか」、あるいは「周囲や相手がどのような感情の状態にあるのか」を読み取り、知覚することは、EQのもっとも基本的な能力であり、良好な対人コミュニケーションのためのスタートとなる能力です。

「感情の識別」は二つの領域から成っています。
一つは「自分自身の感情を知覚すること」であり、もう一つは「相手や周囲の人の感情を読み取り、識別すること」です。

まず、一つめの「自分自身がいまどんな感情なのかを知覚すること」ですが、これはさほど難しいことではないように思えます。誰でも、自分がいま怒っているのか、喜んでいるのか、あるいは悲しんでいるのかは容易に判断できるからです。

しかし、実はそうとも言えないのです。
確かに、「いま、あなたはどんな感情ですか」という質問を受けた場合は、「ちょっと緊張しています」とか「少し腹が立ってます」と自分の感情を省みて答えることが出来ます。
しかし、それは自分を「質問に答えられるような平静な感情」に切り替えられる程度の感情の状態の場合だけです。もし、激怒していたり、憎悪で腹が煮えくり返っていたり、悲嘆にくれているような状態なら、「いま、あなたはどんな感情ですか」という質問を受けても、「うるさい!」と叫んだり、怖い顔で睨んだり、声をあげて泣き続けたりという結果になります。
思考が感情によって支配されてしまっており、自らの感情を省みるという意識的な行動に移行できないからです。

したがって、EQを発揮しようとする場合、「いま、あなたはどんな感情ですか」という質問を、自分で自分に投げかけることが重要なポイントになります。

その理由は二つです。


一つは、この質問を投げかけることによって、自分の感情を意識して捉えることができるということです。
わたしたちは意識しなければ、自分の感情を認識することはできません。無意識のままだと、単に感情に流されるだけです。わたしたちの思考や行動は感情によって左右されます。
したがって、対人コミュニケーションにおいてEQを発揮しようとする場合、自分自身のその時の感情を意識的に把握しなければ、自分が相手に対してなぜいまのような態度を取ったのかを判断することもできません。

もう一つの理由は、「いま、あなたはどんな感情ですか」という質問を、自分で自分に投げかけることで、自分の感情を瞬時に「質問に答えられるような平静な感情」に移行させることができることです。質問をする行為自体がすでに平静な感情を含んでいるのです。
激怒や強い憎悪や悲嘆のような状態では、自ら質問をするという行為を行なうこと自体が困難です。その場合は少し時間を置くことです。
たとえば、突然、怒りでカッとした場合の感情のピークは六秒程度で収まるとされています。憎悪や悲嘆などは、その原因や置かれた状況によって収まる時間は異なりますが、少なくとも自分で自分に「いま、どんな感情ですか」という質問を投げかけることが出来れば、その時点で、感情のピークは過ぎているということであり、その質問に答えることでさらに気持ちを落ち着かせることができ、次のプロセスである「感情の利用」への移行が容易になります。

一方、「感情の識別」能力を高めるためには、「感情を表現する言葉」を出来るだけたくさん知ることも重要です。

わたしたちは何かを感じたり、物ごとを思考するとき「言葉」にして考え、認識します。
楽しいと感じたとき、人は自分の笑い顔を思い浮かべてそう感じるのではなく、「楽しい」とか「面白い」という言葉を思い浮かべて、自分の気持ちを認識するのです。
たとえば、氷がたくさん入った水に手を入れれば、誰でも「冷たい!」と感じます。それは「冷たい」という表現語を知っているからで、その言葉を知らない幼児が手を入れたら、他の知っている言葉、たとえば「痛い」とか「寒い」と感じるのです。
感情も同じで、「感情を表わす言葉」を多く知れば知るほど、自分や他者の感情をより正確に識別し、表現することが可能になります。

感情を識別するとは、多彩な表現手段を持つということでもあるのです。

EQ能力ブランチ2 感情の利用

[感情の利用]――問題解決や課題達成のために思考プロセスを導き出すよう自分の感情を利用する能力。

感情を利用し自分をモチベートする

人の行動は、その時点における感情の状態に大きく影響されます。「感情が高まり、やる気に満ちているとき」と、「気持ちが沈み、消極的なとき」とでは、同じ仕事をやっても違った結果になります。
つまり、何かの課題達成を目的に行動を起こすとき、その行動にもっともふさわしい感情の状態に自らを持っていくことができれば、よりよい結果が期待できるのです。それを、自ら行なう能力が「感情の利用」です。

自分自身の明確かつ具体的な目標を持つことも、「感情の利用」能力の発揮につながります。
たとえば、舞台俳優になりたいという明確な目標を持った人は、劇団での下積みも苦になりませんし、アルバイトに明け暮れる日々もわりと平気です。舞台に立って自分を表現したいという強い気持ちが、自らをモチベートしているからです
。一方、同じアルバイトで生活している人でも、確たる目標を持たない人はなかなか自分をモチベートすることは難しくなります。そのため、すぐ休んだり、時間に遅れたり、ちょっと嫌なことがあればすぐバイト先を辞めたりしがちになります。

「感情の利用」能力を発揮するもう一つの方法は、物事に対する見方を少し変えてみることです。
たとえば、「自分の担当している仕事は、自分の義務だ」と考えれば、気持ちは重くなりがちです。しかし、「自分の仕事は上司や周囲の人たちからの期待なのだ」ととらえれば、気持ちを前向きにすることが出来ます。
山中鹿之介ではありませんが「苦労こそ自分を成長させる」という考え方をするのも有効です。目標を持たず、とりあえずアルバイトで生活しているという人でも、「この苦労は必ず自分の役に立つ」と考えることが出来れば、多少の面倒なことや嫌なことくらいは簡単に乗り越えられます。
このように物事の見方をちょっと変えてみたり、価値観をすこしずらしてみたりすることによって、何らかの課題解決や目標達成のためにふさわしい感情をつくりだしたり、自分をモチベートすることも「感情の利用」能力の発揮の一つです。

「共感」と「同情」

「感情の利用」は、対人関係においては「相手に共感する能力」として位置付けることが出来ます。相手の立場に立って考え、相手の感情に共感できれば、自分の感情をその場にふさわしいものに変えていくことが出来るからです。

また「共感」によく似た感情に「同情」があります。しかし、この二つは似て非なるものです。
共感が「相手の気持ちや感情を自分のものとして感じ取ること」であるのに対し、同情は相手の気持ちや感情をまったく共有することがなくても感じることができます。そのため、共感が目的を持った行動を生みやすいのに対し、同情はなかなか目的行動にはつながりません。

 たとえば、ある苦境に陥った人がいるとします。その状況を知るだけで、たとえそれがテレビのニュース画面であっても、新聞の紙面であっても、わたしたちはその人に同情することが出来ます。同情という感情の裏には、自己の優位性を確認するという意識が隠れているからです。しかし、同情しただけでは、その人に対して何らかの行動(たとえば救済活動など)を取ることはほとんどありません。

 わたしたちが、その苦境に陥った人に対して何らかの行動を取るのは、その人の考えや感情に共感した時です。たとえば、その人が陥っている苦境から逃れるために必死に苦闘している姿勢や、逆に、自分の力ではどうにもならないと嘆いている表情から、わたしたちは、その人の考えや感情を読み取り、共感することで「何とかしてあげたい」という気持ちになり、それが行動につながるのです。
  もちろん、同情も相手のことを思うという意味では共感と同じです。ただ、同情して悲しんだり、哀れんだりすることの多くは、単に相手に自分を同一化させているだけであり、心理的には実は自分のために悲しんだり、哀れんでいることが多いのです。

つまり、言い方は悪いかもしれませんが、「相手のために悲しんでいる自分が好き」というケースが多いのです。

EQ能力ブランチ3 感情の理解

[感情の理解]――自分や他者にその感情がなぜ起きて、どのように変化するかを理解する能力。

感情の持つ特性を知る

EQの中でもっともIQ的要素が求められる能力が「感情の理解」です。

「感情の理解」能力は、大きく二つの段階に分けて考えることが出来ます。
第一段階は「感情の持つ特性を理解すること」であり、第二の段階が「感情と状況を結びつけること」、つまり、「その感情がどのような状況や要因によって生じ、どのように推移していくのかを理解すること」です。

感情が生起するのには何らかの理由があります。
わたしたちは嬉しいことや楽しいことがあれば喜び、嫌なことがあれば悲しんだり、怒ったりします。
こういった感情が生れる原因はすべて外的要因によるものです。多くの企業のテーマである対人コミュニケーションに絞るなら、わたしたちの中に生起する感情の原因となるのは相手であり、周囲の人たちであり、それらを含む状況です。
わたしたちは全員が「自分対自分以外」という構図の中で、互いに感情を生起する原因になったり、結果になったりしています。

 このため、感情は複雑な形を取りがちです。しかし、それらは感情の持つ基本形の組み合わせであり、基本形自体はそれほど多くはありません。
第一段階の「感情の持つ特性を知ること」とは、この感情の基本形を理解することです。

たとえば、感情は勝手にやってきます。わたしたちは感情が生起しないよう制御することは出来ません。感情は突然生れ、生理的な変化を引き起こします。突然、心臓の鼓動を早くしたり、発汗作用をもたらしたり、顔色を変えたりします。

感情は変化や出来事に対する反応です。恋人に出会うと、誰でも気持ちが特別な反応を起こすのを感じますし、変化に遭遇すると不安や恐怖、あるいは期待などを感じます。
感情はわたしたちの思考能力や知的活動に影響します。不安や怒り、憂鬱などを抱えていると覚えるべき知識も頭に入りませんし、考えをまとめるにも支障をきたします。
感情は行動を導きます。恋人に出会えば、近寄りたくなりますし、嫌いな人を見かけたら逃げたくなります。

また、感情の生じ方にもいくつかの特徴があります。感情はあまり単独では生起しません。たいていの場合、人はいくつかの感情を複合的に感じます。
仕事で失敗したときは失望と同時に悔しさや無念さを感じるものですし、自分に対する憤りや協力者への申し訳なさ、部下への不満の感情なども感じたりします。
相手に気に障ることをいわれ、カッとした場合でも、頭のどこかでは悲しみや不安、恐れなどの感情を同時に感じていたりするものです。

人は相反すると思われる感情を同時に感じることも少なくありません。
結婚や就職など新しいスタートに際しては喜びや希望と同時に少なからぬ不安を感じるものですし、大きな仕事が成功したときなどには嬉しさや達成感、満足感で満たされるとともに、情熱を傾けた仕事が終わったことによるある種の寂しさや喪失感も感じたりします。また、仕事が十分にうまくいっている時でも、忙しくて家庭を犠牲にしている場合は、満足感とともに悲しい気持ちも感じるのです。

さらに、感情は弱から強へと推移する傾向があります。始めはちょっとした困惑だったものが、状況の継続によって迷惑になり、次第に当事者に対する怒りや激怒に変わっていきます。心配は恐れとなり恐怖へと推移しますし、関心は期待となり警戒へと移っていきます。感情はグラデーションのように濃度の濃い方向へと移行していくのです。

このような感情の持つ特性を知り、認識することが「感情の理解」の第一段階です。

EQ能力ブランチ4 感情の調整

[感情の調整]――他者の感情に適切かつ効果的に働きかける行動をとるために、自分の感情を調整したり、コントロールする能力。

適切な言動のために感情を調整する

EQを発揮するための最後のステップが「感情の調整」です。ここでは、対人関係において相手の気持ちにもっとも適切かつ効果的な行動をとるために、自分自身の感情に最後の調整・操作を行ないます。
言葉をかえれば、「感情の調整」とは、「感情の利用」によってつくりだした自分の感情を、「感情の理解」で導きだした対応行動に適したように調整・操作する能力といえます。

まず「感情の識別」によって両者の感情を認識し、次いで「感情の利用」能力を発揮し、自分の感情を落ち着かせます。たとえば、次第に苛立ちつつあった自分の感情をいったん落ち着いた感情に作り変えるようなものです
その落ち着いた感情の状態で、次のステップである「感情の理解」に移り、当面する状況において自分が取るべき、最良と考えられる対応策にたどりつきます。それは「自分の言葉が相手を傷つけたのが発端だから、まず謝ったほうがいい」というようなものです。さらに「では、具体的にはどうしたらいいだろう。あまり深刻なのは、かえって気まずい雰囲気になりかねないし……」と考えていくことになります。

こうして、取るべき対応を決定すると、ここで最後のステップである「感情の調整」に移ります。謝罪には言葉と行動が必要です。そして、あらゆる言動は感情に影響されます。
たとえばこの際取る選択とは、先ほどまでの二人の話題を利用して、明るく謝るという方法などです。瞬時に自分の感情を明るく謝るためにふさわしいと思われる感情――素直な中に茶目っ気と期待を抱いた気持ち――に調整します。

 EQは、「感情の識別」からスタートし、「感情の利用」「感情の理解」というコースをたどり、最後に「感情の調整」を経ることで、対人コミュニケーションにおける「効果的な言動」という果実を生み出すのです。


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